お知らせ

R8白石高校(普通科・看護科・七ヶ宿校)入学式 式辞

青空のもと、純白の雪をたたえた不忘山が高くそびえ、麓を流れる白石川には清流の音とともに、やわらかな日差しが輝いています。そして、本日の佳き日を祝うかのように、校庭の桜も満開となりました。

本日ここに、同窓会長 山田光彦様、PTA会長 三浦純様をはじめ、多くのご来賓の皆様のご臨席を賜り、令和八年度 宮城県白石高等学校普通科・看護科並びに七ヶ宿校の入学式を挙行できますことは、本校教職員一同にとりまして、この上ない喜びでございます。

保護者の皆様、ご入学おめでとうございます。

思い返してみますと、この子どもたちが生まれたのは、東日本大震災の前後でした。そして小学校高学年の頃には、新型コロナウイルスのパンデミックに直面しました。マスクの下に表情を隠し、互いに言葉を交わすことも控えながら給食をとる日々を過ごしてきました。先が見えない不安の中で、不自由な思いを重ねてきたことと思います。保護者の皆様はそうした子どもたちの苦労を一番近くで見守ってこられました。今日から高校生となりました。これからは、あの時間を取り戻すかのように、思いきり笑い、語り合い、学びを深めてほしいと願っています。

 さて、ここには、普通科、看護科、七ヶ宿校の新入生がいます。

 まずは、看護科の皆さん。

 将来、誰かを助けたいという思いから、看護師を目指されたことでしょう。この会場にいる誰もが年を取ります。いつか必ず看護師さんにお世話になることになります。皆さんが看護師になろうと志を立て、これから看護の道に進もうとしていることは大変尊いことです。私は白石高校看護科の校長として、そのような皆さんを頼もしく、そして誇らしく思います。
 次に、七ヶ宿校の皆さん。

七ヶ宿校は小規模な学校ですが、一人一人をとても大切にしており、教師と生徒がまるで家族のような温かい学校です。また、七ヶ宿校では四季折々の楽しい行事が行われています。春には七ヶ宿の地域の歴史を学ぶ一環で、七ヶ宿ダムの中の通路を歩くなど、貴重な経験ができます。夏には七ヶ宿町で開催されている「わらじで歩こう七ヶ宿」に参加し、七ヶ宿街道を歩く体験をします。冬には雪の中でスキー教室も開かれます。七ヶ宿での高校生活を、楽しみにしてください。

 そして、普通科の皆さん。

 皆さんは普通科に進学しましたが、「普通科」はなぜ普通と呼ばれるのか分かりますか。ちなみに、七ヶ宿校も昼間定時制の普通科です。さて、なぜ「普通」なのでしょうか。

 普通の反対は特別ですね。それは、看護科のように看護師になるための特別な専門教育ではないという意味です。general education、つまり一般教養を幅広く学ぶことを「普通教育」と法律で定められたからです。ですから普通科では興味があることは何でも学ぶことができます。そのために白石高校では探究活動にも力を入れています。楽しみにしていてください。

さて、これから皆さんに、高校生としての3つの話をしたいと思います。

 まず、一つ目です。皆さんに質問があります。

 本校の校訓を読めますか?

「自彊不息」

 誰も読めないと思います。安心してください。じきょうやまず、と読みます。

「自強」

 明治時代まで使われていた古い漢字なのすね。それでは「自強」とは、どういう意味なのか?想像してみてください。「自分は強いんだ。」半分当たっていますが、違います。少し説明します。「自強」と似ている言葉に「勉強」があります。皆さん、「勉強」の意味を説明できますか?「勉強」の意味は「勉強」すること、では説明になりません。では何でしょう?

では、説明します。

勉強も自強も「強い」という漢字が入っていますね。これはそのまま強いという意味です。勉強の「勉」という漢字の意味が分かりますか?勉とは「免れる」と「力」を組み合わせた文字です。つまり、勉強とは「免れたくとも、避けたくても、いやでも力を出して取り組む」ことです。それに比べて、本校の校訓「自彊」は「自ら、自分を強くする」という意味です。「主体的な行動」です。誰かに強制されるのではありません。

皆さん、野球の大谷翔平選手を知っていますね。大谷翔平選手は自分で大きな目標と小さな目標を立て、小さな目標をひとつひとつクリアーしながら、自分で自分を鍛えてきました。だれかに鍛えられたのではありません。まさに「自強」です。白石高校の校訓は「勉強」ではなく「自強」です。白高生は「自ら、自分を強くする」そうあるべきだと、創立以来、校訓とされています。

それでは、2つ目の話をします。 

ここにいる普通科、看護科、七ヶ宿校のみなさんは、全員、性格も違えば、好みも違うはずです。全く性格が違うのに、仲間になる方法を知っていますか?それは、同じ目的を目指すことです。例えば、「試合に勝つ」とか。人は、性格が違っても、同じ方向を目指す人どうしで仲間になるのです。一緒に失敗したり、泣いたり、笑ったり、一緒に苦労をすると、仲間になるのです。だから親友は、部活動などの活動の中で生まれるのです。本気でやればやるほど、強い仲間意識が生まれます。

ですから、部活動には積極的に関わってください。運動部でも文化部でも構いません。この中からきっと、3年生になる頃には、白石高校のユニホームや白石高校の制服を着て、東北大会やインターハイ・全国大会に出場する人が出てきます。そして七ヶ宿校でも定時制通信制体育大会で全国大会に出場する人が出てきます。県内外に「白石高校」の名前を広めてください。校長として君たちを期待しています。 それから、全国大会といえば、甲子園球場の敷地内に「甲子園歴史館」があるのをご存じでしょうか。館内には、歴代の高校野球出場校の名が刻まれたボールが展示されており、白石高校の名もそこに飾られています。関西地方を訪れる機会があれば、ぜひ一度ご覧になってください。 

最後に、3つ目のお話をします。 

私は理科の教師なので、「理科」の視点からお話しします。「時間」と「生物」についてです。 過去から現在そして未来、という順番が逆転している生物がいると言えば信じられますか?

さて、ここにいる皆さんの多くは16歳だと思いますが、生物の世界には、私たちの常識では考えられない「年齢の逆転」を起こすものがいます。普通、人間ならば祖父母が一番年上で、親、子、孫と続くにつれて若くなっていきます。しかし、「ご先祖様の方が、子孫よりも後で生まれる」という不思議な現象が起こる生物がいます。それは何でしょうか?答えは「植物」です。ここにアサガオの種子があります。皆さんも小学1年生の時に育てた記憶があるのではないでしょうか。 植物の種子というのは、水がなければ何十年、時には何百年もの間、時を止めたまま生き続けることができます。これを「休眠」といいます。そして、水・酸素・温度という3つの条件がそろった瞬間に、時計の針が動き出す「休眠打破」が起こるのです。例えば、皆さんが小学1年生の時に育てたアサガオが毎年、種子をこぼし、代々命をつないでいたとしたら、今はもう9代目くらいの「ひ孫のひ孫」たちが生きていることになります。ですが、もし皆さんが「9年前に採取した種子」を今日植えたとしたら、どうなるでしょうか。「9代目の子孫」と一緒に、ずっと昔のご先祖様である「9年前の種子」が同時に発芽し、成長することになります。これこそが、命の時間の逆転現象です。今朝、皆さんが学校に来る途中に見かけた草も木も、去年できた種子から生えたものとは限りません。10年前、20年前、あるいはもっと前の種子が、今年ようやく目を覚ましたのかもしれません。つまり、目の前にある植物は全て、おじいさんとひ孫が同時に「新人」として隣り合って生きています。植物は人間では考えられない「時間の混ざり合い」が起きているのです。

最後に、これまで3つの話を聴いて面白いと思いませんでしたか。本来知らないことを知るのは、楽しいものなのです。高校は「学び」の場です。「勉強」ならば、つらいと感じるかもしれません。白石高校では「自強」です。皆さん一人一人が自ら学ぼうとすれば、学びは間違いなく楽しいものになります。さて、新入生の皆さん。皆さん一人一人もまた、自分だけの時間を持った「種子」です。周りの誰かが先に芽吹いたとしても、焦る必要はありません。植物がそうであるように、人にもそれぞれ「目覚めるべきタイミング」があります。私たち教職員は、皆さんがそれぞれのタイミングで力強く発芽し、自分らしい花を咲かせるための「最適な環境」でありたいと願っています。白石高校で、七ヶ宿校で止まっている時間が動き出す、輝かしい三年間になることを期待し、式辞といたします。

 令和八年四月八日

 宮城県白石高等学校 普通科 看護科 七ヶ宿校 校長 若林春日